まとまりのある文章を書く力を育む指導(帯活動編)
今年度の全国学力・学習状況調査では英語も調査対象となっており、その結果に関してはニュースにも大きく取り上げられました。
毎年、その結果を基に報告書が作成されますが、それには今の中学生の英語力における課題が詳しく記されています。
私が今回注目したのが、「日常的な話題について、事実や自分の考えなどを整理し、まとまりのある文章を書くことができるかどうかをみる」調査問題の結果でした。報告書によると、今回の正当率は 7.7%だったそうです。31年度同調査では1.9%だったことを踏まえると6%改善したと言えますが、まだまだ「書く」ことの指導が不十分であることを痛感します。
今回は「書くこと」に焦点を当て、日々の帯活動で実践できる、"まとまりのある文章"を書くための力の育成について述べていきたいと思います。
1 まとまりのある文章とは何なのか
中学校学習指導要領解説によると、『「まとまりのある文章を書く」とは、文と文の順序や相互の関連に注意を払い、全体として一貫性のある文章を書くことを示している。』とあり、また、『「導入-本論-結論」や「主題-根拠や具体-主題の言い換えや要約」など、文章構成の特徴を意識しながら、全体として一貫性のある文章を書くことができるようにすることが重要である。』と述べられています。
つまり、中学校学習指導要領の求める『まとまりのある文章』を書くためには、①取り上げる話題は一つ、②文章構成が非常に大切、③文と文を関連付けて書く、といった3つに留意する必要があります。それらを生徒にどのように指導していけばよいのでしょうか。
2 いきなり「書く」から入らない!
声を大にして言いたいことが、「書く」力を伸ばしたいからといって「書く」活動ばかりやらせても効率が悪いということです。なぜなら、「書く」は生徒にとって負荷が大きい活動であるためです。自分で文章を考えるだけでなく、それを書くことは語彙や文法の知識・定着がダイレクトに直結してしまうため、英語が苦手な生徒にとっては非常にハードルが高いと感じさせてしまいます。
3 「話すこと[発表]」からのWritingへ
前回のブログで、「話すこと」の帯活動を紹介しましたが、この活動を即興のスピーチに発展させてWritingにつなげてしましましょう。「話す」と「書く」は同じアウトプット系の活動ですが、スピーキングはスペルを知らなくても伝えることができますし、ジェスチャーや単語の羅列でも相手に伝えることができます。つまり、負荷が「書く」に比べて小さいのです。まずは、生徒にとってハードルの低い活動から取り組ませていくことがポイントです。
以下が指導の手順です。
①Topic、Useful Expressionsを導入する
前回と流れはほぼ同じですが、Useful Expressionsをより即興スピーチに適したものに変えてあげます。
スピーチの発表時間はTopicによって適宜決めます。
②自分の言いたいことのキーワードをノートに書かせる
紹介したい内容についてのメモを書かせます。しかし、文ではなく、あくまでもキーワード程度(例. Sports day、Mayなど)に留めさせます。この時間は1分くらいでよいでしょう。
③デモンストレーションを行う
この活動で達成してほしいゴールを実際に示します。ALTと見本をできる時は、リアクションやあいづちなどを大げさに使い理想的な聞き手を示してあげてほしいと思います。
④活動についての指導
ペアを変えて3セット、今回の例だと一人30〜40秒で行います。やり取りの時と同様、"I'm First."等で決めさせます。実施前に、「Keep talking, don't stop!」「Be good listeners!」を徹底的に指導します。また、友達の表現で良いものがあればどんどん自分のスピーチに取り入れようと伝えていきます。実際、「ああそう言えばいいのか!」「これ何て言えばいいの?」など、友達からたくさんのことを学ぶ生徒が多いです。
⑤Writingへつなげる
3セット即興スピーチが終わったら、自分がどのようなことを言ったのかノートにメモさせます。それを基に、今回のTopicに関しての自分の答えを英語で書く宿題を課します。その際、「Easy and Simple Englishで書くこと」を伝えます。
①〜⑤の活動を定期的に実施し、話した英語を書けるようにしていきます。また、一つの話題について様々な情報を付け足しながらある程度の量の英文を書かせる経験を積ませることで、書くことへの負担感を軽減していきます。
4 添削について
提出させた英文ですが、毎回毎回チェックをするのは大変です。私はALTがいれば添削はALTにお願いをしています。こちらの余裕がなければ、共通の誤りの訂正例を示したり、何人かの英文だけ添削しそれのコピーを共有するなどしています。
日々の活動で「話す」→「書く」活動を取り入れ、生徒一人一人のアウトプット力を鍛えていきたいですね!
「話すこと[やり取り]」の指導(帯活動編)
現行の学習指導要領が実施されて早くも3年目となりました。今回の学習指導要領改訂で大きく話題になったことの一つが、「話すこと」のうち「やり取り」と「発表」の2領域が設定されたことです。詳しくは学習指導要領解説や様々なところで説明されているので割愛しますが、実際のコミュニケーションの場面を想定した『即興で話す』言語活動の実施が改めて求められることとなりました。
1 とにかく子供たちにやらせてみよう!
長年、「学校の授業を受けても、全く英語を話せるようにならない。」と言われてきました。英語科の教員も話す力を伸ばしたい気持ちはありつつも、どのように「即興で話す」活動を設定していけばいいのか模索している先生方も多いことと思います。今回の記事では、私が日々帯活動で実施している帯活動の実践についてお話したいと思います。
やり方は実にシンプル。トピックを提示し、やらせてみる。それだけです。授業者の立場から考えると、「生徒の話が続かなかったらどうしよう…」、「台本を作らせないとできないのではないか」など、多くの不安をもつことと思いますが、生徒を信じてやらせてみましょう。これが一番大切な心構えです。(こちらの予想以上にがんばって取り組んでくれます。)
2 私の実践について
そうは言っても、生徒のつまずく原因を想定し対策を考えておくことはとても重要です。生徒の立場に立って、どのようなヒントがあれば活動に取り組みやすいか、生徒の実態を思い浮かべながら考えてみてください。私は以下の手順で指導しています。
①Topic、Useful Expressionsを導入する。
私は電子黒板を活用し、まず上のようなスライドを提示します。Topicは何でも構いませんが、既習事項を主に取り扱います。色々な意見が出るものを設定するといいでしょう。Useful Expressionsでは会話を継続させるための表現を提示することが多いです。特に最初のうちは一問一答のような会話になってしまうことが多いので、"Tell me more."を使わせて考えを引き出させるようにしています。あいづちに関しては生徒も面白がって使うので、様々なものを教えてあげるとよいでしょう。
②デモンストレーションを行う。
最初に見本を示してあげることも効果的です。私がアメリカの大学で勉強したときによく言われたのが、"I do. You do. We do."でした。この活動で達成してほしいゴールを授業者が示してあげることで、生徒の見通しをもった参加を促すことができます。なお、実際にデモンストレーションで答え方、情報の付け加え方、使ってほしい表現を強調して言ってあげるとよいです。ちなみにデモンストレーションの相手はALTでも生徒でもどちらでも構いません。生徒を選ぶ場合は、答える方を授業者が先に担当するなど配慮してあげてください。
③活動中の指導
活動時間は生徒の実態によっても違いますが、1分〜2分程度を1セットとし、ペアを変えて2〜3セット実施します。質問者はじゃんけんで決めるのではなく、"I'm first." "After you."から選ばせて始めさせています。活動中は生徒の様子を歩き回って確認し、ヒントを出したり終わってしまったペアに話を継続するように指導したりしていきます。
こちらが考えている以上に、子供たちは英語を使って活動したいと考えています。最初はうまく盛り上がらなくても、毎回続けることが大切です。苦手に感じる生徒もいますが、私は「出川イングリッシュでもいいから、とにかくコミュニケーションを取ってみよう。それが英語上達への第一歩だよ!」と声掛けをしています。こちらの願いを子供たちに伝え、少しでも英語への抵抗感を減らしていってほしいと思います。
ご挨拶とこのブログについて
目次
1 自己紹介
aqua0894と申します。公立中学校で英語の教員をしております。
2このブログで目指したいこと
現在学校現場は大変です。それに加え、英語科に求められていることも多岐にわたり、日々の教材研究や授業改善に時間を割けない先生方も多くいることと思います。
このブログで目指したいことは大きく2つです!
1 子供たちの英語力を確実に伸ばしていく指導方法を共有していくこと
2 授業準備にかける時間が少なくても、効果的な授業を展開していくためのノウハウを共有していくことです
長年英語教育に携わってきた経験、数多くの研究授業や研修をから得た知識・技術等を英語科の先生方にお伝えし、少しでも教育業界に貢献できますと幸いです。
よろしくお願いします!